“赤い兎”をつかまえて。
でないと、2022年が滅びる。
「ウサギさん。あなたと会って、もうすぐ一年なんだね」
「アリスがわたしを助けてくれて、そんなに経つんだね」
白い頭髪からぴょこんと生える長い耳。最初に出会った頃を懐かしむように笑う少女は、ふと真剣な表情を浮かべた。宝石みたいな瞳が、アリスをじっと見据える。
「アリス。あなたの使命は赤い兎を捕まえること。2022年を守ること」
「うん。わたし、そのために一年間旅をしてきた」
「もうすぐ赤い兎に追いつくよ。でも残された時間は少ない」
アリスは空を見上げた。
夜空は重い雲に覆われていた。空気がひりひりと張り詰めている。世界の終わりが近いのだと、ウサギは言った。
「見て! 終末時計だ!」
ウサギは遥か頭上、空の果てを指差した。
雲を裂き、雷鳴と暴風を引き連れて、摩天楼よりも巨大な世界終末時計が姿を現す。闇夜よりも黒い色の針が少しずつ、少しずつ。動く。
——大きい。あまりにも。そしてあれが零時を指し示した瞬間に、世界は終わるのだ。
アリスは恐怖し、同時に奮起する。絶対に世界を救うのだ。そして、ふと感じた印象を口にした。
「……なんだろう。わたし、あれを前にも見たことがある、ような……」
「そんなはずないよ。アレは、世界が終わる瞬間にしか現れないんだから」
「追いついた!」
聳え立つ世界終末時計。その麓に、アリスたちは辿り着いた。
そこに赤い色をした人影がいる。赤い色をした兎が。
「え……“わたし”……?」
アリスは目を疑う。振り返った赤い兎。その顔は、自分自身の...