文字を複製し、流布させる行為は紀元前の写本から、唐代の拓石等を経てデジタル印刷へと発展した。またディスプレイメディアの普及により、活字は不特定多数の人々の目に写っては消失し続けている。その総量は日々増え続け、多くの文字は本来の役目を全うできずにいる。
立体的に映る文字は、新しい複製技術である3Dプリンタで印刷する際に内部に生成される構造体=INFILLによって形作られた文字の骨組みである。現在多く流布しているゴシック体を立体化したものから生成された構造を文字と見立てることによってそれは「文字に基づいた象形文字」となる。3次元化されるはずの構造体を2次元化することで現代の視点ならではの文字を残していくことを試みる。
本作はSNS投稿の配列や縦横比に親和性がある七言絶句をモチーフとし、構造としての文字を通して識字させ、その意味をモバイルで検索させることで文字の本質を思考させる。
車の外装塗装を行なってきた作家自身慣れ親しんだ版画的手法でもあるマスキング塗装のスプレーワークは、定速横断する筆による表現として。不完全なマスキングの稜線から塗料が吹き込み滲む様は墨の滲む柔らかさとして見立てた。
本作は物理作品と同時にNFTを介したIPFSデジタルネットワーク上にも並行して文字を刻印することを試みる。物理作品の劣化や破壊による文字情報の損失が先か、デジタルネットワークの消滅が先か。未来に発掘される文字は果たしてどちらなのどちらなのだろうか。
The letters that appear in three dimensions are the skeleton of a lett...