CARET

わたしは今、Dharmaの駐屯地からとても離れた場所で任務を遂行している。 Aerie Security本部から与えられた今回の任務は「動きを伴うものへの銃撃」 具体的には、対象が視界に入ったらたとえ罪のない民衆であろうと、躊躇なく撃つこと。 この区域には何者も存在してはいけない。 この区域において存在、生存は罪である。 しかし、長い時間この場所で活動を続けていると自分自身の役割を忘れ、銃撃される側に溶け込んでしまいそうになる。 仮に、わたしがこの職務を放棄した場合、同じ任務を与えられたDharmaのメンバーは躊躇なく、わたしに向けて引き金を引くだろう。 きっと、わたし自身も他のメンバーが職務を放棄した場合、感傷にひたることもなく引き金を引き、処理をする。 その後、自分の引き金で仲間を殺したことを思い返すことはないだろう。 同僚だとか、仲間だとか、友情だとか。 わたしたちにそういった甘酸っぱい概念は存在しない。 わたしは誰かの理想とする美しさのために、視界に入ったものを撃たなければならない。 わたしは何を壊すのか、何のために壊すのかさえ知ってはならない。 だからこそ、知らぬ間に誰かの理想とする美しさを邪魔する存在に自分自身がなりうる可能性を考えると、恐怖が常につきまとう。 「されど、われまことに汝らに告ぐ、わが去るは汝らの益なり、我さらずば助け主なんぢらに来たらじ、我ゆかばこれを汝らに遣わさん。」 “Dharma”