本日の業務は不審な行動が疑われる民間人のデータ整理の日である。
この時代において紙でデータを管理する企業は少ないだろう。
保管に場所は取るし、経費だってバカにならない。塵だって積もれば山になる…。
上層部は、他所からのハッキングや人為的エラーによる機密情報の漏えいを懸念しているのだろう。
しかし、もしこの紙データの保管庫で火災が起きたら?盗みに入られたら?
勿論、バックアップなんてものは取っていない。
詰めの甘さというべきか、この社会の頂点に君臨する会社としての驕りのようなものすら感じる日々である。
…と、まあ上層部に言えるほど会社の風通しなんてものは良くないわけで、愚痴でも吐きながら業務に取り掛かるとしよう。
しかし、この資料の女の子…。
たった17歳の少女であっても「危険因子」の可能性を持っていればこのように出生地から家族構成まで、事細かに調べ上げられる。
無論、個人情報を調査され管理されているのはこの少女だけでない。
そのような事実が公にされると、どのような反応が起こるかの想像など容易い話である。
上層部は、わたしたち末端の平社員からこの事実が漏れることを恐れていないのだろうか。
単純作業の暇つぶしに考えてみたところ、一瞬で結論に至った。
事実が公になってしまえば、社会は大きく動き、会社は確実に破滅するだろう。
そうなったらこの企業に勤める人間は職を失うことになる。
この企業に仕える者のほとんどは孤児院で育ち、幼少期からこの社会の在り方を正義とする教育を受けてきた者たち。
徹底的な教育を受け、この企業に従事してきた者がその後の人生...