あれは金木犀の香りが辺り一面に優しくひろがる秋祭りの夜の特別な時間。
遠くの方で楽しそうな話し声が聞こえる。
毎年この時期が好きだった。いつもより君と長く一緒にいられるから。
そばにいた君に想いを伝えようとしたけれど…。そっと口を閉ざした。この心地よい関係が壊れてしまうのが怖かったから。
伝えたいことを言えないまま、月日が流れ、君には大切な人ができた。
あの時気持ちを伝えていれば違った今があったのかもしれない?いや、何も変わらなかったかも?思い出の栞を握りしめながら、思いを巡らせても答えはどこにも存在しない。
あの夜の金木犀の香りだけが、今もまだ鮮やかに色付いている。
そんな10月の木曜日の物語―。
That was the special time of the autumn festival night when the scent of fragrant olive gently spread all over the place.
I can hear happy voices in the distance.
I loved this time of year. Because I can be with you longer than usual.
I tried to convey my feelings to you, who was by my side, but... I shut my mouth softly. Because I was afraid that this comfortable relationship would be...